シリーズ『映画館の未来を考える』1章 1-2 映画館研究をはじめる

1-2 映画館研究をはじめる

今週もすてきな映画に出逢いましたか?
こんにちは、うめちゃん先生です。


わたしは映画館が大好きすぎて、大学院生のときにパリで映画館の研究をしていました。


そんなわたしが担当する映画館研究コラム『映画館の未来を考える』シリーズ。


第2回目である今回は、そんなわたしが映画館の研究をしようと思うまでのお話をします。
個人的なお話ですが、もしご興味ありましたらお付き合いくださいませ。

目次

1章 都市に暗闇は必要である
   1-1.映画館と出逢う
   1-2.映画館研究をはじめる
2章 映画のはじまり
3章 映画館の移り変わり―パリ市街での変遷をおって
4章 映画の国、フランス!
5章 パリの映画館MAP
6章 映画館の未来を考える

映画館に目覚めた大学生

 福岡のちいさな田舎町で育ったわたしを待っていたのは、当時福岡市内にあった8つの映画館でした。

・シネリーブル博多
・シネテリエ天神
・ソラリアシネマ
・KBCシネマ
・中州大洋映画劇場
・天神東宝
・ユナイテッドシネマキャナルシティ13
・ユナイテッドシネマももち

映画館に通いはじめた大学生



 選び放題の上映ラインナップ。気分によって変えられる上映空間。

 映画館に通えるように大学の時間割を調整し、毎週の上映スケジュールとにらめっこし、カルチャー好きの先輩たちに出逢い、だんだんと普段の生活の中に映画館があるのが当たり前になっていきました。


 いわゆる「大学“カルチャー”デビュー」です。

なぜこんなに映画館に惹かれるのか

 足しげく映画館に通ううち、大学で建築を学んでいたわたしは、次第に映画館という空間の持つ意味や必要性を考えるようになりました。


 その中でたどりついた一つの答えが、
「街の中にある映画館は、街の喧噪から少し離れたいときのエスケープゾーン、もしくは、その時の気分を変えてくれるワープ装置である」
というものです。


 街の中にある映画館が機能している効果として、以下のものを感じていました。

・暗く防音された部屋では、雑音がなくなり、情報疲れした脳をリセットすることができる。
リセット効果

・映画の中で他人の人生を疑似体験すると、鑑賞後の街並みが、入館前と違う色合いに感じる。
レイヤー効果

・同じ映画を観たお客さんとは、会話をせずとも、なんとなく一体感を感じ、孤独感が和らぐ。
シンパシー効果

 など。
 そして、確信したのです。

だからこそ都市に暗闇は必要である、と。


 この仮説をもとに映画館に通ううち、映画館で映画を観ることでしか得られない価値が絶対にある!という強い気持ちにかられ、わたしの中での興味の先が 映画 < 映画館 になっていきました。

福岡のミニシアターが一斉に消えた年

 そうこうしていた大学4年生。悲しい現実に向き合うことになります。
福岡市内のミニシアターが忽然と静かに姿を消していったのです。

・Tジョイが出来る代わりに姿を消したシネリーブル博多
 …「百万円と苦虫女」を一人で観た後、消化できずに家に帰ったこと。

・ピンク映画館を経て閉館したシネテリエ天神
 …リマスターされた「白い馬/赤い風船」を、満員の狭い地下で観たこと。

・わたしと同じ年だったソラリアシネマ
 …過去の名作も流してくれて、本当にありがたかったこと。

 
 どの映画館もそれぞれに個性があり、大好きでした。


 実際にはその後、シネコンが出来たので福岡市全体のスクリーンの数は減るどころか増えていきます。
 けれど、ミニシアターがなくなったということは自分の中でとても大きな事件でした。上映される作品数がぐぐっと減っちゃう。大好きだった映画館に二度と入れなくなる。


 3Dとか4DXとかの最新技術だけではない映画館そのものの魅力。それが失われていくことを本気で危惧した初めての出来事でした。

閉館の日に泣く泣く撮った写真。
本編前に西鉄の古い写真が流れていたのも懐かしい。

なぜミニシアターは消えてしまうのか。どうしたら救えるのか。

 身近にあった映画館がなくなってはじめて知りたい、知らねばならないと痛切に感じました。
 なんとかして「映画館」という「文化」を後世にのこせる手段はあるのか、その答えを得なければと思いました。


 それからしばらく、映画の歴史、映画館の歴史、ミニシアターを運営している人の熱意と苦労、日本の興業システム、制作の流れ、かつて世界にあった伝説的な映画館などなど、調べられるものを片っ端から漁る日々を過ごします。

そして、映画館発祥のパリへ。

 そんな中、迎えた大学院生活。わたしは幸運にも交換留学生として1年間パリに行く機会を得ることができました。

・リュミエール兄弟によって世界で初めて映画が上映された街、パリ。
・いまなお多くの映画館の残る街、パリ。
・そして、自国の文化としての映画を大切にする国、フランス。


 映画館を残していくためのヒントを得る、またとないチャンスだと思いました。

「よし、1年間でパリにある映画館(当時84館)を全制覇しよう。」


 パリの映画館はどんな場所なのか。そこに集うひとたちはどんな人たちなのか。実際に体験してこよう。


 わたしの1年をかけたパリの映画館巡礼は、そうして始まりました。そして、若気の至りともとれるこの挑戦は、純粋で無垢で強烈なエネルギーと意地のようなもののおかげで、無事に達成されたのです。


 その1年でなにがわかったのか、まだ自分のなかでも言葉に出来ていない部分もたくさんあります。


 それでもやっぱりパリはすごかった。映画愛に溢れていた。


 そこから感じたちいさな希望。それをふくめて映画館の未来を考えていきたい。そんな思いでこのコラムを紡いでいこうと思っています。

次回予告

次回から「第2章 映画のはじまり」として、映画の歴史の基礎知識をお話していきます。まずは、映画がうまれる前に生み出された数々の発明品のお話を次回のコラムで。

大学院生時代にパリに留学。 パリにある映画館を全館(2013年当時84館)まわり、研究論文を提出。 福岡映画部第一回イベントにて、トークゲストを務めた後、映画部に所属。 よく観るジャンルは、ヨーロッパの日常を描いたもの。
投稿を作成しました 5

関連する投稿

検索語を上に入力し、 Enter キーを押して検索します。キャンセルするには ESC を押してください。

トップに戻る