毎月の公開予定作品の中から福岡映画部メンバーが気になる作品を1本ずつ紹介しあいながら映画駄話を繰り広げるネット番組。その名も「 BUSHITSU TV 」! 第3回目となる今回は、12月に公開予定の注目作品 をご紹介していきます。
スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け
上:私が今月楽しみにしている作品は『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』です!
上:「スター・ウォーズ」の新たな3部作としてスタートした『スター・ウォーズ フォースの覚醒』、『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』に続く3部作の3作目。「スター・ウォーズ」サーガのエピソード9にあたり、1977年のシリーズ1作目から計9作品を通して語られてきたスカイウォーカー家の物語が完結する。というのが本作なんですね。
石:ホームムービーですよね。まとめて話せる人いる?
梅:3部作が3セットあって、70年代に作られたフェーズ 2 (エピソード 4 ~ 6 )ではマーク・ハミル演じるルーク・スカイウォーカーが主人公。2000年代に作られたフェーズ1(エピソード 1 ~ 3 )はルークのお父さん、アナキン・スカイウォーカーが主人公。
石:公開順としては、4・5・6 → 1・2・3 → 7・8・9 。そして、今度公開されるのがエピソード 9 だよね。
上:先に言っておくんですが、私はすごくスター・ウォーズオタクなわけではなく、皆さんの近くに絶対スター・ウォーズオタクがいると思うので、その方に聞いたほうが絶対に早いです ! (笑)
石:まあでも上野ちゃんは(スター・ウォーズを好きになったきっかけに)ちょっと特殊な、映画部っぽいポイントがありまして……。
上:もともとSF映画に興味がなかったのでスター・ウォーズも「いつか観れたらいいな」くらいにしか思ってなかったんですけど、今度公開されるエピソード 9 にもカイロ・レン役という敵役として出演しているアダム・ドライバーさんっていう俳優さんがいらっしゃるんですね。その俳優さんがすごく好きで。代表作の『パターソン』とかいろいろ観てて、すっごい好きになって。ある日、映画館でスター・ウォーズ(2017年に公開されたエピソード 8 )の予告編を観た時にアダム・ドライバーの顔がバーンって全面に出てきて「アダム・ドライバーが出てるなら今度の新作を観に行きたい! 」と思って。そのエピソード 8 を観るためにエピソード 1 ~ 7のDVDをレンタルして、結構時間はかかったけどまとめて観たら「スター・ウォーズってこんなに面白かったんだ! 」ってハマって、今度のエピソード 9 も、1作目が公開されたのが42年前なんですけど、この42年の大きな物語が完結するっていう作品なんですよね。なので、これは観に行きたいなと思ったのが、今回推したいきさつです。
石:この間までスター・ウォーズ観たことない人がめちゃめちゃ熱弁してるのBUSHITU TVっぽいよね。
梅:42年をかけてのファンがいっぱいいるのがすごいよね。
上:そうですね。今回の推しポイントとしては、42年の大作を終わらせるって相当な覚悟が要ると思うんですよ。
石:どこに着地させてくれるんだい? ってね。
上:そう。だから、それに携わるスタッフさんもキャストさんも、本当にすごい覚悟だったり思いをもって作ってるんだろうなあっていうのを考えるとやっぱりこれは観ときたいなあと思って。まだまだニワカのうちですけど。
石:絶賛、ニワカだってイイじゃない! ってラグビーでも言いよったよ!(笑)
梅:「スター・ウォーズ」は42年かけて作ってるから、42年のうちに、どう映画技術とかSFの技術とかが発達してきたかとかっていうのも物語を観る上でストーリー以外にも着目ポイントがそれぞれの時代にあるから。最初は着ぐるみっぽい人がいたけど、それがだんだん着ぐるみじゃなくなってきたり。役者さんも昔は、女性は(エピソード 4 から登場している)レイア姫みたいな扱い方が本当に女性って(うやうやしく気遣われるような)感じだったけど、だんだん戦うほうで活躍したりとか。
石:(エピソード 7 ~ 9 の主人公である)レイね。
梅:時代とかキャスティングという点でもね、世界の移りごと、映画の技術の変わりようとかを楽しめると思うので。
上:価値観とかもそうですし。シリーズ通して描いてあるのは、一応 ‟ 光と闇の戦い ” っていう風に大々的には言われてるけど、結局平和な世の中を作るためにどういう正義をもって戦うかっていうのがポイントなんですよね。
石:普遍的なテーマだよね。
上:そう、描かれてるのはSFの世界だけど、私たちの生きる世界とまったくもって変わらない価値観っていうところがやっぱりすごく響くなあと思って。そういうところも、まとめて観てハマったポイントになってるので、これを機によかったら1から8まで観てから9を観てくださる方が一人でも増えたらいいなと思います!
石:結構いつにも増して熱めのリコメンドですね!
梅:家族の話ですから、気軽に観て大丈夫ですよ(笑)。
石:銀河をまたにかけたホームムービーですから(笑)。(上野ちゃんは)いいね、おまとめで観たのが最近だから、このメンバーの中で一番楽しめる。観たのが結構前だと忘れちゃう、かといって巻き戻して観るのもなかなか大変だもんね。マーベル作品とかスター・ウォーズ系だとそうですけど、それだけ観る価値はありますよね。
上:はい、ということで公開日は12月20日からですね! 県内のシネマ・コンプレックス他中洲大洋でも上映予定です!
シュヴァルの理想宮 ある新聞配達員の夢
梅:私が12月おすすめする映画は『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』です!
梅:ある郵便配達員が33年の歳月をかけ、たった一人で築き上げた “ シュヴァルの理想宮 ” 。ある日偶然つまずいた奇妙な形の石に魅せられた男は、自然が作り上げた複雑な表情を持つ石を素材に、新聞や雑誌や絵葉書で見知った遠い異国の景色の断片を組み合わせるようにして、幅26m、高さ10mに及ぶ、複雑な意匠をこらした建造物を完成させた。木製の手押し車で石を拾い集め、積み上げること9万3000時間。愛娘のために世界にふたつとない “ おとぎの国の宮殿 ” を手作りするという彼の果てしない挑戦を支えたのは、夢を信じる心と深い愛だった―。ピカソやアンドレ・ブルトンが絶賛し、フランス政府指定の重要建造物となった奇想の宮殿の誕生秘話。ということで、実は私はシュヴァルの理想宮がかねてより大好きで。というのも、シュヴァルの理想宮は現存しているんですよね。それを初めてNHKのドキュメンタリーで知って「なんじゃこれは! 」ってなって、実際に私(留学で)フランスにいたので、フランスのリヨンから電車で1時間くらいのところにある、本当に超田舎町なんですけど、小さい町なんですけどそこまで一人で行ったんですよ。
石:そりゃあ行くよね。あんな素敵な建物。
梅:新聞配達員だから、新聞配達をしながら道端で拾った石を集めていく、もう孤独な黙々とした作業で作り上げられた宮殿で、彼はもう最終的にお墓としても使いたかったの。自分が生きた証としてそこに眠りたかったんだけど、(国に)ダメって言われて。「お墓はちゃんと墓地に作ってくれ」って言われて。実は、シュヴァルの理想宮から歩いて10分くらいのところに村の墓地があるんだけど、その中に小さいバージョンのシュヴァルの理想宮もあります。彼は、シュヴァルの理想宮を作った後お墓バージョンを作ったの! 本当に石とか貝殻を固めて作った宮殿の、中も潜れるし部屋もあるし、階段もあって上にも登れるの!
石:その大きいほうのシュヴァルの理想宮? 気になってたんだけど、どうやって(石や貝を)くっつけるの? まあまあでかいよね。
梅:そうそう。26メートルあるので、中学校のプールよりでかい。
石:ちょっと大きめの家だよね。
梅:でも住めないの。でっかい彫刻だと思ってもらったほうがいいです。(建物の)パーツごとに、ポストカードで見たりした東洋風なデザインがされている箇所があったり、エジプト風な箇所があったりとか。面ごとにいくつか(異なるデザインの壁を)作っていて。そして、ところどころに彼が書いたポエムというか言葉がメッセージとして刻んであるの。ストーリーとか言葉とか、それこそ娘さんに宛てたお話とか。ぐるぐる(宮殿の中を潜って探索)している中にそういう言葉だったりも現れてくるし、お人形さんみたいな犬とか生き物も彫刻で作って飾ってあるから、テーマパークみたいな感じなんだけど、それを一人の男の人が33年の月日をかけてライフワークとして作ったっていう感じで、ちょっと重たいというか情念的なものはすごい感じます。でも、すごく可愛い。シュヴァルは郵便配達員なので、お金がないんですよ。超貧乏だから、当時は厳しい収入だった。異国に対して夢は持つけどいけるわけがない。奥さんも、そんなことをしている旦那さんに対して、でもすごく優しい奥さんなんですよ。村の人から見ると「あいつ何やってるんだ」ってみんなドン引きすけど、彼がやっていることをずっと応援していて。それが今ではフランスの重要文化財! ピカソにも影響を与えたって言われてるけどガウディとかもシュヴァルの理想宮を見たっていう説があるくらい。ただの郵便局員なんですよ。技術もなにもない、パッションだけで作り上げたものがのちのアーティストさんたちに本当に影響を与えたっていう。
石:人生振り切れってことかな!
梅:そうだと思うよ! 流されずに、それを作りきったっていうことが大事だと思う。
石:何のためにやってるっていうのもないよね?
梅:ないの! 生きた証じゃないけど、その時間を表現するっていうか。個人的な思いですけど。その物語をわかりやすく今回の作品ではフランスらしく描かれていて。ほとんど全編が、本物のシュヴァルの理想宮で撮影された話なので、私がさっき言った刻まれた言葉なんかも見えると思います! できる過程から完成図も映画の中で観れると思うので、ぜひ観てほしい。
石:娘さんとかも出てきて、そこの子育てにかかるいろんな苦労とかお金とかっていうこととシュヴァルの理想宮とっていうせめぎあいも描かれてそうですね。
梅:こんな人が世の中にいるんだっていうのは、ちょっとした心の支えになるんじゃないかなと。フィクションではなく、今回は本人が出るわけではないのでドキュメンタリーではないんですけど、ノンフィクションの気持ちで観てほしいストーリー。本当に普通に生きてる人の人生こそドラマなんだなっていうような作品になってると思いますので、とても楽しみにしております!
上:『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』は12月13日からKBCシネマにて公開予定です!
家族を想うとき
石:私が今回観たいなと思っているのは『家族を想うとき』です。
梅:(今回のリコメンドは)家族つながりね!
石:これは、知ってる人は知っているケン・ローチ監督の作品で、『わたしは、ダニエル・ブレイク』っていう2017年くらいに日本では公開された作品なんですけど、そのケン・ローチ監督の最新作になります。
石:家族を守るはずの仕事が、家族を引き裂いてゆく──。それでも負けない気高く力強い家族の絆を描く感動作。2016年カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝き、日本でも大ヒットを記録した『わたしは、ダニエル・ブレイク』。この傑作を最後に、一度は表舞台から降りたケン・ローチ監督。だが、同作のリサーチ中に社会の底辺で目の当たりにした〈現実〉が彼の心の中に生き続け、いつしか〈別のテーマ〉として立ち上がり、どうしても撮らなければならないという使命へと駆り立てた。引退表明を撤回した名匠が最新作で描いたのは、グローバル経済が加速している〈今〉、世界のあちこちで起きている〈働き方問題〉と、急激な時代の変化に翻弄される〈現代家族の姿〉だ。2019年のカンヌ国際映画祭では、「私たちがやらねばならないことはひとつ。耐えられないことがあれば、変えること。今こそ変化の時だ」という、公式上映後のケン・ローチ監督のスピーチがさらなる拍手を呼んだ感動作が、ようやく日本にもやって来る。
これはね、完全に「暮らしの大学」から引っ張ってきてます。先日11月4日に九州大学の箱崎キャンパス跡地で “ まちと家族 ” をテーマに映画上映と講義をおこなうイベントを共同主催でやらせていただいたんです。やっぱり、頭の中がそっちに引っ張られているというか。
梅:考えてしまうよね。
石:うん、考えてしまう。これね、今回の『家族を想うとき』っていうのは働き方問題、日本でも働き方改革っていわれてますけど映画部も全員、独立してるとかもうすぐ独立するとか。そんな感じでやっていたりするんですね。この映画部を運営しているということ自体もさ、「仕事なの?趣味なの?」みたいな。結構言われない?
上:言われますね。仕事なのか、社会人のサークル活動なのか。
石:言われるよね。社会の中でいろんな働き方いろんな仕事が生まれてきていて、仕事っていう言葉が持つ意味の幅がすごく広がっているから難しいところだよね。よく言えば、いろんな可能性が選べる時代になったとも言えるけど。この『家族を想うとき』で描かれてるのは、個人事業主とかフランチャイズとかは名ばかりに苦しい立場にいる人たち。ちょっと公式サイトを読みますね。
「個人事業主とは名ばかりで、理不尽なシステムによる過酷な労働条件に振り回されながら、家族のために働き続ける父。そんな父を少しでも支えようと互いを思いやり懸命に生き抜く母と子供たち。日本でも日々取り上げられている労働問題と重なり、観る者は現代社会が失いつつある家族の美しくも力強い絆に、激しく胸を揺さぶられるだろう。」
っていうあらすじの一部なんですけど。やりたいことをやれる世の中になっている。これはいいところ。でも、同時に情報が上手く取りにくい状態にあったりとか、前例がなさすぎて頼む側も頼まれる側もどういうリスクをはらんでいるか分からない仕事っていうのが、今存在しているのではないかと思います。特に、日本で分かりやすいところでいうとコンビニ。フランチャイズとして立ち上げたけど、実際にはすぐ近くにコンビニが乱立してしまってお客の取り合いや売り上げの低下っていうのもあれば、同時に人材不足の問題が起こったり。
梅:あとは、24時間営業するのかっていうこととかね。個人事業主とはいえども、そこは選べなくてブランドイメージが優先されたりとか。
石:コンビニだとそういう問題があるよね。この『家族を想うとき』の中で主人公のお父さんは、恐らくドライバーの仕事をしているんだよね。雇用形態が個人事業主やフリーランスの状態になったら、社会的な保障の部分が自由と引き換えにグッと狭まる。自分で判断したり解決したりしないといけないタスクが結構あって。ひとつひとつはできないわけじゃない。けど、きっとこのお父さんも予告編を観ている感じだといろんなことが降りかかってきて。それだけじゃないの、家族のこともある。
梅:個人事業主は自分が資本だから、体調管理とかの自己ケアも必要だよね。『家族を想うとき』のお父さんも、家族のために頑張らないといけないんだけど、自分は倒れちゃいけないっていうプレッシャーがある。ケン・ローチ監督がそれを見つけた時に「描かねばならない」って使命感に駆られたっていうのはとても重要だよね。
石:ケン・ローチ監督は、ずっとそういう志を持って描き続けている方なので全部おすすめだし、是枝裕和監督の作品が好きな方には通ずるものがあります。NHKで家族をテーマにケン・ローチ監督と是枝監督が対談した番組もありました。多分、世界中を見渡しても今の映画業界でこういったことをテーマに扱う監督といえばこのお二人が筆頭だと思います。なので、我々にも当事者意識高めで取り組んでいきたいテーマですね!
上:『家族を想うとき』は12月13日からKBCシネマにて公開予定です!
12月に福岡で公開される作品一覧
12月3日公開
ペトラは静かに対峙する 3日のみ:KBCシネマにて上映
12月6日公開
忍びの国 ユナイテッド・シネマ 福岡ももちにて上映
惡の華 セントラルシネマ大牟田にて上映
マリッジ・ストーリー イオンシネマ大野城にて上映
〈ラブライブ!シリーズ9周年記念上映会!〉ラブライブ! The School Idol Movie12日まで:ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13にて上映
〈ラブライブ!シリーズ9周年記念上映会!〉ラブライブ!サンシャイン‼︎ The School Idol Movie Over the Rainbow 12日まで:ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13にて上映
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド エクステンデッド・カット 19日まで:福岡中洲大洋にて上映
12月7日公開
さらば愛しきアウトロー 20日まで:小倉昭和館にて上映
ラスト・ムービースター 20日まで:小倉昭和館にて上映
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 20日まで:大川シネマホールにて上映
12月10日公開
12月11日公開
WEEKEND ウィークエンド 11日のみ:KBCシネマにて上映
12月13日公開
2人のローマ教皇 小倉コロナシネマワールド、KBCシネマにて上映
〈午前十時の映画祭〉サウンド・オブ・ミュージック 26日まで:ユナイテッド・シネマなかま16にて上映
〈午前十時の映画祭〉ウエスト・サイド物語 26日まで:福岡中洲大洋にて上映
12月14日公開
“ 樹木希林 ” を生きる 20日まで:小倉昭和館にて上映
12月17日公開
ゴーストランドの惨劇 17 日のみ:KBCシネマにて上映
12月20日公開
僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング
12月21日公開
ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 1月3日まで:小倉昭和館にて上映
12月24日公開
グッド・ヴァイブレーションズ 24日のみ:KBCシネマにて上映
12月27日公開
劇場版 新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA – X
〈午前十時の映画祭〉ショーシャンクの空に 1月9日まで:福岡中洲大洋、ユナイテッド・シネマなかま16にて上映
12月28日公開
それでは、次回の更新もお楽しみに!
最後までお付き合いありがとうございました〜!