前回のコラムでは、暮らしの大学 【 Class 02:「 まち と 家族 」編 】 開催に込めた想いと、「 クラス 」の構成についてご紹介してきました。こちらの記事では、講義を行なっていただく先生と上映作品についてご紹介していきます。
講義を行なっていただく先生について
今回のクラスで講義を行なっていただくのは、まちづくりやデザインの目線から教育・福祉などのプロジェクトに携わる田北 雅裕 先生です!
講師|田北 雅裕 氏 1975年熊本市生まれ。 九州大学大学院人間環境学研究院専任講師。 認定NPO法人SOS子どもの村JAPAN理事。 2000年にデザイン活動triviaを開始。 以降、まちづくりという切り口から様々なプロジェクトに携わる。 近年は福岡市里親委託等推進委員なども務め、 里親普及や子ども支援等、子ども家庭福祉の課題を デザインという発想で解決していく実践・研究に取り組んでいる。 田北先生のパーソナルサイトはこちらから。
田北先生をご紹介させていただくにあたり、ぜひご一読いただきたいのがこちらのWEBマガジン。
こちらは、福岡都市景観賞で2015年に先生が寄稿されたWEBマガジンです。「 景観賞 」のサイトでのコラムですから、景観というワードを軸に書かれていますが、田北先生のこれまでの活動の経緯を知ることができ、もはやご紹介はこれだけでいいのでは…と思ってしまうほどの密度です。
途中、すこーしだけ専門的なお話も出てきますが、それも学びの楽しさ。丁寧に説明や注釈もあり、誰でも読める内容となっておりますので、今回のクラスの予習としてぜひご一読ください。
「 家族 」を取り巻く様々な環境
WEBマガジンでも語られていたように、「 景観 」「 風景デザイン 」「 まちづくり 」と取り組んで来られた田北先生が、今、一番力を入れて取り組まれているのが、「 家族 」についての取りくみ。まちづくりの中で「 まち 」の一部であるはずの「 家族 」が語られないことに違和感を感じ、「 デザインを手がかりに子どもや家族が抱えている問題を解決していくための活動 」をはじめられたと言います。
講義の打ち合わせを進める中でも、やはりキーワードは「 家族 」。皆さんは「 家族 」と聞くと、どんな家族像をイメージするでしょうか?それぞれに違う「 家族 」へのイメージ。田北先生は私たちに、「 家族 」に関連する様々な社会課題について教えてくれました。
【 拡大家族、育児放棄、虐待、里親、養子縁組、多様性、まちとのつながり、心理的な安心感・接続感、家族再統合、代替養育、出張里親… 】
なかには初めて耳にするワードもあり、私たちは「 家族 」を取り巻く様々な環境があることを知ることとなりました。
上映する作品について
そうして、「 家族のあり方 」や「 まち 」についての様々な要素を紐解きながら考えることとなった今回の作品セレクト。その過程で一貫して第一候補であり続けたのがこの作品。
ショーン・ベイカー監督の「 フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 」です。
定住する家を失った 6歳の少女ムーニーと母親ヘイリーは、 フロリダ・ディズニーワールドのすぐ側にある モーテル「マジック・キャッスル」で その日暮らしの生活を送っている。 周囲の大人たちは厳しい現実に苦しんでいたが、 ムーニーは同じくモーテルで暮らす子どもたちとともに 冒険に満ちた日々を過ごし、 管理人ボビーはそんな子どもたちを 厳しくも温かく見守っていた。 そんなムーニーの日常が、 ある出来事をきっかけに大きく変わりはじめる……。 http://floridaproject.net/
はじめて上映可能リストにその名前を見た時から、「 いつかどこかで絶対に上映したい! 」と願っていたこの作品。
徹底したこども視点で描かれる楽しく夢のような毎日と、その裏側で厳しさを増す貧困。親子とはなにか、豊かさとはなにか、優しさとは、正しさとは…。映画は観客に普遍的なテーマを投げかけます。
作品との出会いはスクリーンで楽しんでいただきたいので、ストーリーに触れることは差し控えますが、初回鑑賞時と2回目以降の鑑賞時で全く異なった表情を見せる映画だと言えます。
使命感をもって作られた力強い映画
米フロリダのディズニーワールドのすぐ横にある安モーテルを舞台にした本作。「 子どもたちにとって世界一幸せな場所のすぐ隣で、貧困生活を送る子どもたちがいるという事実を知り、映画で描かなくてはいけないと感じたんだ 」というショーン・ベイカー監督の言葉にあるように、ある種の使命感を持って作られる映画には、作品としての強度のようなものがあるような気がしています。伝えなければならない、という力強さを感じるのです。
そして同じように、今回講義を行なっていただく田北先生の活動や発信からも、目の前、手元にある課題を直視し、考え、行動することへの、より具体的な使命感のようなものを感じています。
二本の映画を観るように
そんな今回のクラスでは、劇映画(フィクション映画)とドキュメンタリー映画、二本の映画を観ているような感覚で、学び楽しんでいただけるのではないかと考えてます。
フロリダの鮮やかな色彩を写す多様な撮影手法や、キャスティングの裏話など、ご紹介したいポイントはまだまだ沢山。そして、田北先生に伺ってみたいお話もどんどん増えていきますが、それはどちらも当日のお楽しみ。
11月4日、文化を考える日に、映画文化とまちのこれからを考える機会を皆さまとご一緒できることを楽しみにしています。皆さまのお越しを会場でお待ちしています!